多汗症
About
            汗は体温を一定に保つために欠かせない生理現象です。運動をしたときや気温が高いときにかく汗は、身体の熱を外に逃がす役割を果たしています。 しかし多汗症では、体温調節とは関係なく大量の汗が出てしまいます。緊張やストレスに関係なく手のひらや脇に汗が流れ落ちるように出るのが特徴で、 日常生活に支障をきたすこともあります。
手汗でノートや書類が濡れてしまったり、握手やパソコン操作が苦痛に感じられたりすることがあります。脇汗は衣服にしみを作り、人目が気になる原因になります。顔や頭部の汗は見た目の印象に直結し、仕事や学校生活に支障が出る方も少なくありません。このように、多汗症は単なる「汗っかき」とは異なり、生活の質(QOL)を大きく下げてしまう可能性があります。
Cause
はっきりとした病気が原因ではなく、交感神経の働きが過剰になっているために起こるのが「原発性多汗症」です。思春期ごろから発症しやすく、手のひらや足の裏、脇など左右対称に汗が出るのが特徴です。睡眠中には症状が落ち着くのも一つの目安です。体質的な要素や自律神経のバランスが深く関わっていると考えられています。
一方で「続発性多汗症」は、ほかの病気や薬の影響によって起こります。代表的なのは糖尿病、甲状腺機能亢進症、更年期障害、自律神経の異常などです。抗うつ薬や降圧薬など、一部の薬剤の副作用として発汗が増えることもあります。この場合は原因となる病気の治療や薬の調整が必要になります。
Causes for each part
        勉強や仕事で紙や道具を扱うときに困るのが手汗です。交感神経が敏感に反応していることが主な原因とされ、緊張やストレスでさらに悪化する傾向があります。幼少期から見られることも多く、学校生活に影響することもあります。
脇にはエクリン汗腺とアポクリン汗腺がどちらも多く集まっています。このうち、体温調節の役割を持つエクリン汗腺が、多汗症の主な原因です。 アポクリン汗腺はにおいの元となる汗を分泌し、ワキガと関係しています。脇の多汗症では「汗の量」と「におい」が混同されることも多いため、適切な診断が必要です。
足裏は靴の中が蒸れやすく、水虫など皮膚トラブルの原因になります。顔や頭部の汗は人目につきやすく、精神的な負担が大きいのが特徴です。外気温やストレスの影響を受けやすいため、日常生活や環境要因との関わりが深いと考えられています。
Symptoms and self-check
以下の項目に当てはまる場合は、原発性多汗症の可能性があります。
2項目以上当てはまるなら、多汗症を疑ってみましょう。
Treatment
                多汗症の治療は、原因や汗をかく部位、日常生活での困り具合に合わせて選ばれます。
                基本的には体に優しい治療から始め、それでも効果が不十分な場合は、さらに効果的な治療法を検討します。
            
まず取り組みやすいのが薬による治療です。
                外用薬(塗り薬)は、汗の出口をふさぐことで発汗を抑えます。脇や手のひらなど、気になる部分に直接使えるのが特徴です。刺激感やかぶれが出ることもあるため、使い方の工夫が大切です。
                内服薬(飲み薬)は、神経に作用して全身の汗を抑える効果があります。ただし口の渇きや便秘などの副作用が出ることもあり、持病や服薬状況によっては注意が必要です。
            
汗の量が多く、塗り薬や飲み薬で十分に抑えられない場合には、より効果の高い治療を検討します。ボツリヌス注射(ボトックス注射)は、汗を出す神経の働きを一時的に止める方法で、脇や手のひら、足の裏に効果があります。効果は数か月持続するため、繰り返し治療が必要です。