胸やけ
胸やけは、みぞおちから胸のあたりにかけて「ヒリヒリ焼けるような感じ」や「酸っぱいものがこみ上げてくる感じ」が続く状態を指します。脂っこいものを食べたあとや、夜遅く食事をしたあとに出やすく、胸の真ん中あたりがムカムカしたり、喉のあたりが熱く感じたりすることもあります。
多くの場合、胃の中の酸っぱい胃液が食道の方へ逆流することで起こります。症状だけを見ると「胃もたれ」や「胸の痛み」と紛らわしいこともありますので、「いつ、どんな時に、どのくらいの頻度で出るのか」を整理しながら原因を探していくことが大切です。
脂っこい料理や揚げ物、甘いもの、アルコール、炭酸飲料、刺激の強い香辛料などは、胃に負担がかかって胸やけを起こしやすくなります。早食いや一度にたくさん食べる習慣、夜遅い時間の食事も、胃の中に食べ物が残ったまま横になる原因となり、胸やけが起こりやすくなります。
前かがみの姿勢が多いお仕事、きつめのベルトやガードル、肥満や妊娠中など、おなかに力がかかる状態が続くと、胃が圧迫されて胸やけがしやすくなります。また、重い荷物を持ち上げた時や、かがんだ姿勢が続いたあとに、胸のあたりがムカムカすることもあります。
精神的なストレスや睡眠不足が続くと、自律神経のバランスが崩れ、胃の動きや胃酸の分泌が乱れやすくなります。その結果、胃の中に食べ物が残りやすくなったり、胃酸が多く出たりして、胸やけを感じることがあります。
一部のお薬には、胃酸が増えやすくなったり、胃や食道の粘膜に負担をかけてしまうものがあります。整形外科での痛み止め、骨粗しょう症のお薬、循環器系のお薬などがきっかけで胸やけが出る方もいます。心臓や肺の病気、糖尿病など、別の病気が背景にあって胸の違和感として感じている場合もあります。
逆流性食道炎は、胃酸や胃の内容物が食道に逆流し、食道の粘膜が炎症を起こしている状態です。胸やけの原因として最もよく見られる病気のひとつです。胸の真ん中が焼けるように熱く感じたり、酸っぱいものが喉元まで上がってくる感じ、咳や声枯れなどの症状が出ることもあります。放っておくと、食道の粘膜に傷がついて「びらん」や「潰瘍」になったり、まれに将来の食道がんのリスクにつながると考えられています。
胃炎や胃潰瘍、十二指腸潰瘍は、胃や十二指腸の粘膜に炎症や傷ができている病気です。上腹部の痛みやムカムカ感、食欲不振などと一緒に、胸のあたりの不快感や胸やけを感じることもあります。
食道裂孔ヘルニアは、本来おなか側にある胃の一部が、横隔膜のすきまから胸の方へ飛び出している状態です。胃が持ち上がることで、胃酸が食道に逆流しやすくなり、胸やけの原因になることがあります。必ずしも全員が強い症状を感じるわけではありませんが、逆流性食道炎と合わさることで症状が長引くこともあります。
機能性ディスペプシアは、検査で明らかな潰瘍や炎症が見つからないにもかかわらず、胃の不快感やムカムカ、胸やけのような症状が続く状態を指します。ストレスや自律神経のバランス、胃の動きの弱さなど、いくつかの要因が重なって起こることが多いとされています。
いつから・どのような状況で胸やけが出るのか、頻度や強さ、食事や睡眠との関係、服用中のお薬などを詳しくお聞きします。
あわせて、おなかの張りや痛み、胸の音、血圧など、全身の状態も確認していきます。問診・診察の段階である程度、原因の見当がつくことも少なくありません。気になっていることや心配なことは、小さなことでも遠慮なくお話しください。
必要に応じて、貧血や炎症反応、肝機能・腎機能などを確認するための血液検査を行います。貧血がある場合は、胃や腸からの慢性的な出血が隠れていることもあり、潰瘍などの可能性を考えるきっかけになります。
また、体の他の臓器の状態を確認することで、全身の病気が隠れていないかもあわせて確認できます。
症状や年齢、持病などから判断して必要と考えられる場合には、当院では胃カメラ(胃内視鏡検査)を行います。
細いカメラを用いて、食道・胃・十二指腸の粘膜を直接観察することで、逆流性食道炎や潰瘍、食道裂孔ヘルニアなどの有無を確認できます。
検査の前には流れや注意点を丁寧にご説明し、不安な点があれば事前に解消できるよう心がけています。検査の結果をもとに、今後の治療方針や生活の工夫について一緒に考えていきます。
逆流性食道炎や潰瘍などが疑われる場合には、胃酸を抑えるお薬や、粘膜を保護するお薬などを用いて治療を進めていきます。症状の強さや持病、お使いの他のお薬との相性も考えながら、お一人おひとりに合った内容や量を調整します。自己判断で服用をやめたり再開したりすると、かえって症状が長引いてしまうことがありますので、不安なことや迷われることがあれば、その都度ご相談ください。
日々の生活の見直しは、お薬による治療と同じくらい大切です。食事の内容や時間、就寝前の過ごし方、喫煙や飲酒の習慣、ストレスとの付き合い方などを一緒に振り返りながら、できることから少しずつ始めていきましょう。
脂っこいもの・甘いもの・香辛料の強いもの・アルコール・炭酸飲料などは、胸やけの原因になりやすいとされています。毎日すべてを避ける必要はありませんが、「続けて食べない」「量を少し減らす」など、できる範囲から調整していくことが大切です。早食いを避けてよく噛むこと、一度に食べ過ぎないこともポイントです。
「食べてすぐ横になる」と、胃の中の内容物や胃酸が食道側に戻りやすくなります。食後すぐに横にならず、少し時間をおいてから休むように心がけてみてください。寝るときは、枕やクッションを使って上半身を少し高くするだけでも、逆流が起こりにくくなります。左側を下にして横向きで寝ると楽になる方もいますので、ご自身が楽に感じる姿勢を試してみましょう。
タバコに含まれる成分は、食道と胃の境目をゆるめてしまい、胃酸が逆流しやすくなると考えられています。アルコールも、胃酸の分泌を増やしたり、粘膜を刺激したりすることがあります。まずは本数や量を少しずつ減らすところから始めてみましょう。
一時的な胸やけには、市販されている胃薬で楽になることもあります。忙しくてすぐに受診が難しいときなど、どうしてもつらい場合に「一時的な対処」として市販薬を使っていただくこと自体が、すべて悪いわけではありません。市販薬で何度も繰り返し症状を抑え続けていると、背景にある病気の発見が遅れてしまうことがあります。数日〜1週間ほど使っても良くならない場合は、ご自身だけで判断せず、当院までご相談ください。
妊娠中は、おなかが大きくなることによる圧迫やホルモンバランスの変化で、胸やけが起こりやすくなります。基本的には、おなかの赤ちゃんに負担をかけない範囲で、生活習慣の工夫や使えるお薬を選びながら対応していきます。
お薬や生活の見直しで胸やけが落ち着いたからといって、背景にあった病気が完全になくなったとは限りません。逆流性食道炎などは、症状が落ち着いても、生活習慣などによって再発しやすい性質があります。「しばらく落ち着いていたのに、また症状が出てきた」「年齢的にも少し心配」と感じる場合は、一度、胃の状態を確認しておくと安心です。
胸やけは、一時的な食べ過ぎや疲れで起こることもあれば、逆流性食道炎や潰瘍などのサインになっていることもあります。
そのうち良くなるだろうと様子を見ているうちに、胸やけのつらさから日常生活に影響が出てしまったり、検査や治療のタイミングが遅れてしまうことも少なくありません。当院では、胸やけの状態や生活背景を丁寧にうかがいながら、必要な検査や治療、日常生活での工夫について一緒に考えていきます。「こんなことで受診していいのかな?」と思うような小さな違和感でも構いません。
気になる症状が続いている方は、お気軽に当院へご相談ください。